オンライン授業・ウェビナーでの理解度確認と参加促進：効果的なアンケート・小テストの活用法
オンラインでの教育や研修において、受講者の反応や理解度を対面時と同じように把握することは、時に難しいと感じられるかもしれません。特に、受講者が複数いる場合やカメラオフでの参加が多い場合、講義が一方通行になりがちです。
このような状況を改善し、受講者の理解度を確認しながら、より積極的に講義へ参加してもらうための有効な手段の一つが、オンラインで実施するアンケートや小テストの活用です。これらは単なる評価のためだけでなく、受講者の集中力を維持し、「場」への参加意識を高めるための強力なツールとなり得ます。
この記事では、オンライン授業やウェビナーにおいて、アンケートや小テストを効果的に活用するための方法や、利用できるツールについて解説いたします。
なぜオンラインでアンケート・小テストが有効なのか
オンライン環境では、受講者の反応が見えにくいため、講師側は「伝わっているか」「理解されているか」を判断しづらくなります。また、受講者側も集中力が途切れやすくなるという課題があります。
アンケートや小テストを適切に挿入することで、以下のような効果が期待できます。
- 受講者の理解度確認: 講義内容の特定のポイントについて、受講者がどれだけ理解できているかを即座に把握できます。
- 参加意識の向上: 能動的に回答する機会を設けることで、受講者が「自分ごと」として講義に参加しているという意識を高めます。
- 集中力の維持: 定期的に短いアクティビティを挟むことで、受講者の注意を引きつけ、集中力を維持する助けとなります。
- 双方向性の創出: 講師から受講者への一方的な情報提供だけでなく、受講者からのフィードバックや反応を得ることで、双方向のコミュニケーションが生まれます。
- 講義内容の調整: 集計結果を見て、理解が不十分な点があればその場で補足説明を行うなど、講義の進め方を柔軟に調整できます。
活用できる主なツール
オンラインでアンケートや小テストを実施するためのツールは多数存在します。代表的なものをいくつかご紹介します。
1. Web会議ツールの標準機能
多くの主要なWeb会議ツールには、投票機能（Polling）やQ&A機能などが標準で搭載されています。
- Zoom: 投票機能があり、複数選択肢や単一選択肢の質問を設定し、リアルタイムで集計・結果共有が可能です。簡単な理解度チェックや意見集約に適しています。
- Microsoft Teams: Formsと連携してアンケートやクイズを実施したり、会議中に簡易的な投票を行ったりできます。
- Google Meet: リアルタイムの投票機能があります。
これらの標準機能は、追加の準備が少なく手軽に利用できる点がメリットです。複雑な設問形式や高度な分析には向きませんが、簡単な確認には十分です。
2. 外部のアンケート・クイズツール
より多様な設問形式や詳細な集計・分析を行いたい場合は、外部の専用ツールが有用です。
- Google Forms: 質問形式が豊富で、簡単なアンケートから本格的な小テストまで作成できます。回答はスプレッドシートに自動集計されます。多くの機能が無料で利用可能です。
- Microsoft Forms: Google Formsと同様の機能を提供します。Office 365ユーザーであればシームレスに利用できます。
- Slido: 質疑応答、投票（Polls）、クイズ機能が特徴です。参加者はPCやスマートフォンからアクセスし、リアルタイムで回答や質問ができます。イベントやウェビナーでのインタラクティブな活用に強いツールです。
- Mentimeter: スライドと連携して、リアルタイムの投票やワードクラウド、クイズなどを実施できます。視覚的に結果を共有しやすく、受講者の関心を引きつけやすいツールです。
- Kahoot!: ゲーム感覚で参加できるクイズプラットフォームです。特に若い学習者に人気がありますが、研修のアイスブレイクなどにも活用できます。
これらの外部ツールを利用する場合は、事前にツールの使い方を講師自身が習得し、受講者への案内方法も準備しておく必要があります。
効果的なアンケート・小テストの活用法
具体的な活用方法について、いくつか実践的なポイントをご紹介します。
1. 目的に合わせた設問設計
- 理解度確認: 直前に解説した内容に関する具体的な知識を問う設問を設定します。「〇〇について、正しい記述を選んでください」「この概念はA, B, Cのうちどれに当てはまりますか」など。
- 意見収集: 特定のテーマに対する受講者の考えや経験を問う設問を設定します。「〇〇について、皆さんの考えに最も近いものはどれですか」「過去に〇〇のような経験はありますか」など。
- アイスブレイク/集中力向上: 講義内容とは直接関係ない、軽い質問やなぞなぞなどを挟むことで、場の雰囲気を和ませたり、リフレッシュさせたりします。
- 振り返り/要望収集: 講義の最後に、内容の理解度自己評価や、次回の講義で扱ってほしいテーマなどを問います。
2. 適切なタイミングでの実施
- 講義開始時: 前回の内容の簡単な復習クイズや、その日のテーマに関する事前知識を問う設問は、受講者のウォーミングアップになります。
- トピック切り替え時: 新しいトピックに入る前に、前のトピックに関する理解度を確認することで、ついてこれているかを確認できます。
- 講義中盤: 長時間になる場合は、一度休憩を挟む代わりに短いアンケートやクイズを行うことで、受講者の集中力をリセットできます。
- 講義終了時: 全体の理解度確認や、講義に対するフィードバックを収集するために行います。
頻繁すぎると流れが悪くなるため、内容の区切りや受講者の集中力が途切れやすいタイミングを見計らって挿入することが重要です。
3. 結果の共有と解説
アンケートや小テストは、実施するだけでなく、結果を共有し、なぜその答えになるのかを解説することに大きな意味があります。
- 即時共有: Web会議ツールの投票機能などは、回答締め切り後に即座に結果をグラフなどで共有できます。これは、受講者自身の理解度を他の参加者と比較したり、講師の解説への関心を高めたりする効果があります。
- 匿名性の配慮: 意見収集などの場合は、匿名で回答できるように設定することで、受講者が正直に回答しやすくなります。ツールの設定を確認してください。
- 解説の重要性: 特に理解度確認の設問では、正答率が低かった問題や、回答が割れた問題について、丁寧に解説を行うことが不可欠です。なぜその答えが正しいのか、他の選択肢がなぜ違うのかを明確に説明することで、受講者の理解を深めます。
実施上の注意点とトラブル対処法
オンラインでのアンケート・小テスト実施にあたっては、いくつかの注意点があります。
- ツールの操作説明: 実施前に、どのツールを使い、どのように回答するのかを明確に受講者に伝えてください。特に新しいツールを使う場合は、簡単な操作デモを行うと親切です。
- 回答時間の設定: 設問数や難易度に応じて、適切な回答時間を設定してください。時間が短すぎると焦りにつながり、長すぎると待ち時間が発生します。
- 通信環境への配慮: リアルタイム性が求められるツールの利用は、受講者の通信環境に依存します。応答速度が遅い場合や、回答画面が開けないといったトラブルが発生する可能性を考慮してください。
- 回答しなかった場合の対応: 全員が回答できない、あるいはしなかった場合の対応方針を決めておきます。必須とするか任意とするか、回答率が低かった場合の次善策などを考慮します。
- 技術トラブル時の代替策: ツールがうまく動作しない場合に備え、チャットでの簡易的な回答や、後からフォームで回答してもらうなどの代替策を準備しておくと安心です。
まとめ
オンライン教育・研修におけるアンケートや小テストは、受講者の理解度を把握し、参加意識と集中力を高めるための非常に有効な手段です。Web会議ツールの標準機能から専門ツールまで、目的に応じて様々な選択肢があります。
重要なのは、単にツールを使うことではなく、「なぜ、いつ、どのような内容の」アンケートや小テストを実施するのか、その目的を明確にすることです。そして、結果を受講者と共有し、丁寧な解説を加えることで、その効果を最大限に引き出すことができます。
最初は簡単な投票機能から試してみるなど、できることから段階的に取り入れてみてはいかがでしょうか。これらのインタラクティブな要素を取り入れることで、オンライン授業やウェビナーがより活気に満ちた、実りあるものになるはずです。