オンライン授業・ウェビナーでの説明を分かりやすくする『手書き・図解』効果的な活用法
はじめに：オンラインでの「伝わる」説明とは
オンラインで授業や研修を行う際、スライドや資料だけではどうしても伝えきれないニュアンスや思考のプロセスがあります。特に、複雑な概念を図解したり、計算の途中経過を示したり、文章では表現しにくい関係性を視覚的に示したい場合、対面授業で行っていた「板書」や「手書き」のような手法が有効になることがあります。
この記事では、オンライン授業やウェビナーにおいて、説明をより分かりやすくするための「手書き」や「図解」の効果的な活用方法について、具体的な手段や実践的なヒントを交えて解説いたします。技術的な操作に不慣れな方にも分かりやすいよう、基本的なことから丁寧にご説明いたします。
なぜオンラインで手書き・図解が効果的なのか
静的な資料だけでは、特に以下の点で限界が生じることがあります。
- 思考プロセスの可視化: 考えを組み立てたり、問題を解いたりする過程をリアルタイムで示すことで、受講者は講師の思考を追体験しやすくなります。
- 注意の喚起: 画面上で動的に文字を書いたり図を描いたりすることは、静的なスライドよりも受講者の視線を引きつけやすく、集中力の維持に繋がります。
- 概念の整理: 複雑な仕組みや要素間の関係性を、図や矢印、簡単なスケッチで整理することで、文字情報だけでは理解しづらい内容も直感的に把握しやすくなります。
- 親近感とライブ感: 画面に直接書き込みながら話すスタイルは、対面での板書や手元のメモに近い感覚があり、受講者との心理的な距離を縮め、ライブ配信ならではの臨場感を高める効果も期待できます。
手書き・図解を実現するための主な方法
オンラインでの手書き・図解は、お持ちの機材や利用可能なツールによっていくつかの方法があります。それぞれの方法について、メリット・デメリットと具体的な使い方をご紹介します。
方法1：配信ツールのホワイトボード機能を利用する
多くのオンライン配信ツール（Zoom, Microsoft Teams, Google Meetなど）には、共有画面上に手書きや図形を描画できる「ホワイトボード機能」が搭載されています。
- メリット: 追加の機材を用意する必要がなく、最も手軽に始められます。ツールの画面共有機能からすぐにアクセスできます。
- デメリット: 機能が限定的な場合が多く、複雑な図や細かい文字を書くのには向かないことがあります。マウスでの操作は慣れが必要です。
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使い方:
- 配信ツールの画面共有機能を選択します。
- 共有オプションの中から「ホワイトボード」を選びます。
- 新しい共有画面としてホワイトボードが表示されます。
- 画面上部に表示される描画ツール（ペン、図形、消しゴム、テキストなど）を使って書き込みを行います。
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効果的な活用例:
- 簡単なキーワードのメモや強調
- 単純な概念図やフロー図
- 計算問題の簡単な途中式
- 受講者からの質問の要約や板書
方法2：タブレットとスタイラスペンを利用する
iPadやSurfaceなどのタブレットと、それに適したスタイラスペン（Apple PencilやSurface Penなど）をPCと連携させて使用する方法です。
- メリット: 紙に書くような自然な書き心地で、細かい文字や複雑な図もきれいに描くことができます。利用できるアプリが豊富で、表現の幅が広がります。
- デメリット: タブレットとスタイラスペンが必要となり、初期投資がかかります。PCとの連携設定が必要になります。
- 必要な機材と設定:
- タブレットとスタイラスペン
- タブレットとPCを接続する方法：
- 有線接続: USBケーブルなどで接続し、タブレットを液タブ（液晶ペンタブレット）のように使用する（例: Duet Display, Luna Displayなどのアプリ利用）。
- 無線接続: Wi-Fiなどを介して画面を共有/ミラーリングする（例: Sidecar (Mac/iPad), ツール標準の画面共有機能, サードパーティ製アプリ）。
- クラウド連携: OneNoteなどのアプリで、PCとタブレット間でリアルタイムにノートを同期させる。
- PC側で、タブレットに表示されている画面や特定のアプリウィンドウを配信ツールで画面共有します。
- おすすめアプリ:
- Microsoft Whiteboard：複数人での共同編集も可能なホワイトボードアプリ。
- OneNote：自由なレイアウトで手書きとテキストを組み合わせられるデジタルノート。
- GoodNotes, Notability (iPad)：ノートテイキングに特化した高機能な手書きアプリ。
- 効果的な活用例:
- 複雑な数学や物理の数式展開
- 詳細な概念図やシステムのアーキテクチャ図
- 語学学習での文字の書き順指導
- デザインやプログラミングにおけるラフスケッチやフロー
方法3：書画カメラまたはWebカメラと物理的な紙/ホワイトボードを利用する
物理的な紙やホワイトボードに手書きしたものを、書画カメラ（実物投影機）やPCに繋いだWebカメラで映して共有する方法です。
- メリット: 最も直感的に、普段の「書く」感覚で行えます。既存の紙媒体やホワイトボードをそのまま活用できます。
- デメリット: カメラの設置場所や角度、照明の調整が必要です。手元が影になったり、文字が小さすぎたりする可能性があります。
- 必要な機材と設定:
- 書画カメラまたはWebカメラ
- カメラを固定するスタンド（書画カメラは一体型が多い）
- 紙、ノート、または小型のホワイトボード
- PCにカメラを接続します。
- 配信ツールの映像ソースを、PC内蔵カメラではなく接続した書画カメラ/Webカメラに切り替えます。
- 必要に応じて、カメラ映像のみを大きく共有画面として映すか、講師の顔映像と並べて映すかを選択します。
- 効果的な活用例:
- 物理的な資料への書き込みやマーキング
- その場で思いついたアイデアの簡単な書き出し
- 物理的なオブジェクト（実験器具など）と関連付けた説明
- 書道や絵画など、手元の動きそのものを見せる指導
効果的な手書き・図解のための実践的なヒント
どの方法を選ぶにしても、オンラインで手書き・図解を効果的に行うためにはいくつかの工夫が必要です。
- 事前の準備と練習:
- 説明の流れに合わせて、どこで手書きや図解を入れるか計画しておきましょう。
- 本番で使用するツールや機材を使って、実際に書いてみる練習を必ず行ってください。特に、オンライン上で文字や図がどのように見えるかを確認することが重要です。
- 複雑な図は、ゼロから書くのではなく、基本的なテンプレートや下書きを用意しておき、そこに書き加えていく形式にすると時間を節約できます。
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配信中に心がけること:
- 書くスピード: 受講者が内容を理解し、必要であればメモを取る時間を考慮し、対面での板書よりもややゆっくり目に書くことを意識しましょう。
- 音声解説との連携: ただ黙々と書くのではなく、「これはAという要素で、ここにBが関係しています」「この式を展開するとこうなります」のように、書きながら口頭で説明を加えることで、受講者の理解を助けます。
- 視認性:
- 文字や線のサイズは、受講者側の様々な画面サイズで見やすいように、普段より大きめに書くことを心がけてください。
- 重要なポイントは、ペンの色を変えたり、下線を引いたりして強調すると効果的です。
- 情報過多にならないよう、画面の内容は適宜消したり、新しいページに切り替えたりして整理しましょう。
- 受講者とのインタラクション: 「ここまではよろしいでしょうか？」「もし分かりにくい点があればチャットでご質問ください」のように、途中で受講者の理解度を確認しながら進めることも重要です。
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よくあるトラブルとその対処法:
- 画面が共有できない/映らない: 配信ツールの画面共有設定で、正しいウィンドウや画面、カメラソースが選択されているか確認してください。PCのプライバシー設定で、利用しているツールに画面録画やカメラへのアクセス許可が与えられているかも確認が必要です。
- 手書きがカクカクする/遅延する: PCの処理能力不足、通信環境の不安定さ、または使用しているアプリの負荷が高い可能性があります。PCの他のアプリを閉じる、通信環境を確認する、より軽量なアプリを使用するといった対策が考えられます。
- 文字が小さくて見えない: 字を大きく書く練習をするか、配信ツールのズーム機能や受講者側での画面拡大機能を案内します。書画カメラの場合は、カメラの設置位置を調整します。
- 手元や画面が影になる: 照明の位置を調整したり、手元を明るく照らす補助照明（デスクライトなど）を使用したりします。
まとめ：オンライン説明力向上のための手書き・図解活用
オンライン授業やウェビナーにおいて、スライド資料だけでなく手書きや図解を効果的に活用することは、説明の分かりやすさを格段に向上させ、受講者の理解度や集中力を高めるための非常に有効な手段です。
配信ツールの内蔵機能から、タブレット連携、物理的なカメラ活用まで、様々な実現方法があります。ご自身の状況や教える内容に最も適した方法を選び、まずは簡単なことから試してみてはいかがでしょうか。事前の準備と少しの工夫、そして実践を重ねることで、オンラインでの説明技術は必ず向上します。
本記事でご紹介した情報が、皆様のオンライン授業・ウェビナーをより分かりやすく、実りあるものにする一助となれば幸いです。