オンライン授業・ウェビナーの効果を高める外部ツール連携:ホワイトボードや共同編集ツールの活用法
オンライン教育や研修のライブ配信(オンライン授業、ウェビナー)において、講師から一方的に情報を伝えるだけでなく、受講者の皆様に積極的に参加していただくことは、学習効果を高める上で非常に重要です。配信ツールの基本的な機能(チャット、投票など)に加えて、外部のツールを連携させることで、より多様な形式でのインタラクションや共同作業が可能になります。
本記事では、オンライン授業・ウェビナーの効果を高めるために、外部ツールを連携させる基本的な手法や、具体的な活用例、導入にあたっての注意点について解説いたします。
オンライン授業・ウェビナーで外部ツール連携を行うメリット
ライブ配信中に外部ツールを連携させることで、主に以下のようなメリットが期待できます。
- 受講者の参加促進: 共同編集機能を持つツール(オンラインホワイトボードやドキュメント)を活用することで、受講者が能動的に意見交換やアイデア出し、成果物作成に参加できるようになります。チャットだけでは難しい、視覚的な情報共有や非同期での加筆修正などが可能になります。
- 多様な表現方法の提供: 配信ツール内蔵の機能だけでは表現しきれない、複雑な図解や構造化された情報の共有、手書き風の表現など、外部ツールならではの表現力を活用できます。
- 情報の構造化・可視化: ブレスト結果をマインドマップとして整理したり、議論の過程をフロー図として残したりと、情報を視覚的に構造化し、全体像を共有しやすくなります。
- 学習プロセスの共有・保存: 共同で作成したホワイトボードやドキュメントは、授業後も受講者がアクセスして復習することが可能です。これにより、学習内容の定着を促すことができます。
連携できる主な外部ツールの種類
オンライン授業・ウェビナーと連携して活用できる外部ツールには様々なものがありますが、代表的なものとして以下のような種類が挙げられます。
- オンラインホワイトボードツール: Miro、Mural、FigJamなどが有名です。仮想的な大きなホワイトボード上で、付箋を貼ったり、図を描いたり、テキストを書き込んだりといった作業を複数人で同時に行えます。アイデア出し、議論の整理、グループワークなどに適しています。
- 共同編集ドキュメント・スプレッドシート: Google Docs、Google Sheets、Microsoft 365のWord/Excel Onlineなどが該当します。複数人が同時にテキスト入力やデータ編集を行えるため、議事録の共同作成、簡単なアンケート結果の集計、グループワークの成果物報告などに活用できます。
- その他のツール: Slidoのような質疑応答・投票特化ツールや、Kahoot!のようなゲーミフィケーションを取り入れたクイズツールなど、特定の目的に特化したツールも画面共有などを通して連携可能です。
外部ツール連携の基本的な手法
外部ツールをオンライン授業・ウェビナー中に連携させる方法はいくつかありますが、主に以下の二つが基本となります。
1. 画面共有による連携
最もシンプルで広く使える方法です。
- 外部ツールを起動: 連携したい外部ツールをWebブラウザや専用アプリケーションで開きます。
- 共有準備: ツール上で、参加者に見せたい画面や編集させたいボード/ドキュメントを開いておきます。必要に応じて、あらかじめボードの構成案を作成したり、共同編集用のシートを用意しておくとスムーズです。
- 配信ツールで画面共有: ZoomやTeamsなどの配信ツール上で「画面共有」機能を選択し、共有したい外部ツールのウィンドウを選びます。
- 操作説明: 受講者に対し、共有している画面が何か、どのように操作してほしいか(例: 「この白い部分に付箋を貼ってください」「A列に自分の名前を入力してください」)を明確に伝えます。
- 必要に応じた操作: 講師は共有画面を見ながら、受講者の操作状況を確認したり、議論を進行させたりします。講師側でも適宜ツールを操作し、情報を追記・修正することもあります。
この方法の利点は、ほとんど全ての外部ツールと配信ツールの組み合わせで実現可能なことです。ただし、受講者が共同編集に参加する場合、受講者側もそのツールにアクセスし、別途操作する必要があるため、ツールの操作に慣れていない受講者への配慮が重要となります。
2. チャット等でのURL共有と共同アクセス
受講者にもツール上で直接操作して参加してもらう場合に用いる方法です。
- 外部ツールでボード/ドキュメントを作成: 連携したい外部ツールで、共同作業用のボードやドキュメントを作成します。
- 共有設定とURL取得: 作成したボード/ドキュメントの共有設定を行います。誰がアクセスできるか(特定のユーザーのみか、リンクを知っている全員か)、どのような権限を与えるか(閲覧のみか、編集可能か)を適切に設定し、共有用のURLをコピーします。特に共同編集させる場合は、リンクを知っている全員が編集できる設定にするか、参加者にアカウント作成を促すかなど、事前に方針を決めておきます。
- 配信ツールのチャット等でURL共有: 配信ツール(Zoom, Teamsなど)のチャット機能を利用して、コピーした共有用URLを受講者に送ります。
- アクセスと参加の説明: 受講者に対し、チャットに投稿されたURLをクリックしてツールにアクセスし、共同作業に参加するよう促します。ツールの使い方や具体的な作業内容を口頭や画面共有で補足説明します。
この方法の利点は、受講者が自身のPC環境でツールを操作できるため、画面共有よりもスムーズに共同作業が進む場合があることです。ただし、受講者側にツールへのアクセスや簡単な操作スキルが求められる点、無料版のツールでは参加人数に制限がある場合がある点に注意が必要です。
具体的なツール活用シーンと実践例
いくつかの具体的な活用シーンと、それに適したツール、実践のポイントをご紹介します。
例1:アイデア出し・ブレインストーミング
- ツール: オンラインホワイトボード(Miro, Muralなど)
- シーン: 講義中に特定のテーマについて受講者からアイデアを募る、グループワークで企画案を出し合う。
- 実践のポイント:
- あらかじめホワイトボード上に、アイデアを書き込むエリアやテーマを明確に示しておきます。
- 付箋の貼り方、テキスト入力の方法など、ツールの基本操作を簡単に説明します。
- 匿名での投稿を許可するかどうか、ルールを明確にします(匿名機能を持つツールもあります)。
- 制限時間を設け、時間内に集中的にアイデアを出してもらうように促します。
- 集まったアイデアをグルーピングしたり、投票機能(ツールによる)で絞り込んだりすることで、議論を深めることができます。
例2:講義内容のまとめ・質問の整理
- ツール: オンラインホワイトボード、共同編集ドキュメント(Google Docsなど)
- シーン: 講義の区切りで内容を振り返り、重要点を共同でまとめる。講義中に発生した質問をリアルタイムで収集・整理する。
- 実践のポイント:
- ホワイトボードに「今日のキーワード」「疑問点」といったエリアを設けておき、随時書き込んでもらいます。
- 共同編集ドキュメントに「質疑応答リスト」といったセクションを作成し、受講者が質問を追記できるようにします。他の受講者が同じ質問をしていないか確認できるようになります。
- 匿名での投稿を許可することで、質問のハードルを下げることができます。
- 講師はリアルタイムで質問リストを確認し、講義の進行に合わせて回答する時間を設けます。
例3:グループワークの成果物作成・共有
- ツール: オンラインホワイトボード、共同編集ドキュメント/スプレッドシート
- シーン: ブレイクアウトルーム等でグループに分かれて作業し、その成果を全体で共有する。
- 実践のポイント:
- グループごとに共同編集用のボードやドキュメントを事前に用意しておきます。
- 各グループに割り当てられたボード/ドキュメントへのリンクをブレイクアウトルーム開始前に共有します。
- 成果物の形式(例: 箇条書きで結論をまとめる、図でプロセスを示す)を明確に指示します。
- 必要に応じて、講師が各グループのボード/ドキュメントを巡回し、進捗を確認したりアドバイスしたりします。
- 全体共有の際には、各グループの代表者が画面共有で自分たちの成果物を発表したり、講師が順番に画面を切り替えながら紹介したりします。
外部ツール連携における注意点とトラブルシューティング
外部ツールを効果的に活用するためには、いくつかの注意点があります。
- ツールの選定: 目的、参加人数、必要な機能(共同編集、図形描画、テンプレートなど)、操作の容易さ、費用などを考慮して選びます。無料版には機能や人数に制限があることが多いため、確認が必要です。
- 事前の準備とテスト: 連携するツールのアカウント作成、ボード/ドキュメントの準備、共有設定、URL発行などを事前に完了させておきます。可能であれば、受講者役の協力者とともに連携テストを行い、スムーズに操作できるか、共有設定に問題がないかなどを確認してください。
- 受講者への説明: 特に普段使用しないツールの場合、操作方法を簡潔に説明する時間が必要です。マニュアルを事前に配布したり、チュートリアル動画を紹介したりするのも有効です。
- 通信環境への配慮: 共同編集ツールは、多くの参加者が同時にアクセス・編集すると通信負荷が高くなることがあります。受講者の通信環境によっては表示が遅れたり、操作がスムーズに行えなかったりする可能性があります。
- 権限管理の徹底: 共同編集を許可する範囲(全員か、ログインユーザーのみかなど)を明確に設定しないと、意図しない情報流出や荒らし行為に繋がるリスクがあります。
- トラブルシューティング:
- 受講者がツールにアクセスできない: URLが正しいか、共有設定が適切か(特にログインが必要な場合)、ツールのサーバー障害がないかを確認します。
- 画面共有中の表示トラブル: 共有設定で特定のウィンドウを選んでいるか確認し、デスクトップ全体共有に切り替えてみる、あるいは一度共有を停止して再度開始してみるなどが考えられます。
- 共同編集ができない/反映されない: 共有設定で編集権限が付与されているか、ツールのサーバー状況、受講者側の通信状況などを確認します。ツールの再読み込みや再ログインを試してもらいます。
まとめ
オンライン授業やウェビナーにおける外部ツールの連携は、受講者の皆様の学習への関与を高め、より活動的な学習機会を提供するための強力な手段です。オンラインホワイトボードや共同編集ツールを効果的に活用することで、一方的な情報伝達から、共に学び、創造する場へと授業の質を変えることが可能です。
初めて導入する際は、画面共有から始めるなど、負荷の少ない方法から試してみることをお勧めいたします。事前の準備と受講者への丁寧な説明を心がけ、これらのツールを皆様のオンライン教育・研修にぜひ活かしてみてください。